大西憲司設計工房[大阪/設計事務所]Kenji Ohnishi archtect

坂本の家[第1期]

Sakamoto
2008

この住宅は、比叡山と琵琶湖に挟まれた東麓にある。この地域は、伝教大師最澄が、8世紀に開いた天台宗の総本山・延暦寺の門前町として古くより栄えていた。周辺には50余り点在する里坊の穴太衆積みの苔むした石垣は、大変美しく、軒を並べる町家の土壁や土蔵と歴史を共にしてきた。この住宅も、130年前に建てられた当時のまま、外観が保たれており、美しい街並みを形成している。桜や紅葉、緑など、身近に四季の移ろいを感じながら穏やかに暮らせるが、冬場は、比叡山と琵琶湖の両方から風が吹き、寒さが厳しい地域である。

住宅の持っている時間の価値を理解し、リノベーションをして、歴史的な環境や美しい風景と共に、家族が互いの距離を保ちながら、住み継ぐことを選ばれた。

その計画は、代々、庄屋を継いでこられた当家が、年貢米を一時保管しておく離れの納屋を、母屋で独り暮らしをしている母親の住まいにコンバージョンすること。続いて、母屋を息子夫婦の住まいにリノベーションすることであった。築130年の納屋は、外観が大壁構造の切妻屋根で、軒高が4.5mと高く作業用の軒の深い土庇がついたプロポーションの良い建物であった。まず、構造設計家と綿密に打ち合わせを行い、既存の建物の良さを損なわないように、出来るだけ補強したことが分からないように耐震補強を行った。寒さ対策として、壁、床の断熱や木製建具とペアガラス、床暖房、天井シーリング、和室を一室空間とし、寝室だけを入れ子状に天井を低くして、冬の寒さに対応した。

建物に刻み込まれた歴史が醸し出す風合いを大切に、耐震性・断熱性を高め、つくり過ぎないように自然なかたちで再生し、歴史的な環境と共に、住み継いでゆけるサステナブルな住まいになるように心掛けた。

所在地:滋賀県大津市

構造:木造平屋建

写真:絹巻豊

作 品

PIECES

大西憲司設計工房のこれまでの作品やプロフィールなどをご紹介しています。

コンテンツ

CONTENTS

PAGE TOP