大阪市の東部の下町に建つ、築40年の老朽化した、木造2階建アパート2棟を、賃貸集合住宅に建て替えるプロジェクトである。

敷地は、JR駅から5～6分の所にあり、商店街や病院、マンション、住宅が混在する住宅密集地の一角にある。生活の利便性は良いが緑がほとんどなく、雑然とした取りとめのない環境である。敷地南側道路を挟んで、病院の病棟と救急搬入口や、高層のマンションが建っている。周辺環境や建築コストを考え、営利を至上目的とした考えではなく、健全な収支計画を立てたうえで、街に極力負荷を与えないことを第一に考え、木造2階建のメゾネットタイプ5戸の、1戸建てのような街に優しい集合住宅を計画した。

緑の少ない周辺環境が、少しでも美しい街並みになるように、建物を道路から2mセットバックさせ、そこに竹林を想定して竹を密植した。アプローチには、落葉樹のやまぼうしを植え、道行く人達の心が和み、季節を感じられるようにした。

アプローチから中庭に一歩入ると、緑豊かな空間が広がり、緑の中を通って、それぞれの玄関へと導かれる。そこでは、朝・夕のあいさつやベンチでの会話など、住人のコミュニケーションの場となる。中庭に植えられた落葉樹や常緑樹の高木や草花が、四季折々の花を咲かせ、秋になると、もみじの葉が紅く染まり、季節の移ろいを感じられる。プライバシー確保の為に設けた、パンチングされた金属折板のスクリーン越しに、中庭の緑と、テラスと連続した室内が、ゆるやかにつながり、内外が一体の空間となる。

密集した都市の中で、緑や光や風など、自然を楽しみながら、居心地良く暮らせる住まいを目指した。

所在地：大阪府大阪市

構造：木造2階建

用途地域：第二種中高層住宅専用地域

敷地面積：368.76m²

建築面積：219.68m²

延床面積：399.82m²

写真：福澤昭嘉