敷地は中国地方の名峰大山の裾野に広がる別荘地の角で、西側道路から1m程上った北からなだらかに南に下る斜面地である。アカマツなどの自然雑木林の静かな環境にあるが、隣地は既に別荘が立ち並んでおり、プライバシーの配慮が必要であった。建主は20年前にこの土地を購入された。建主からの要望は、子供達もそれぞれ独立し、夫婦と愛犬2匹が四季を通して利用できるように、特に犬達が雪が大好きなので広いテラスで雪遊びをさせたい、温泉付なので広くゆったりとした、大きな窓のある浴室が欲しいなどであった。

計画は、既存の樹木を出来るだけ残しながら、隣家への視線や、眺めを考えて慎重に建物を配置した。平面計画は間口4間、奥行5間、20坪（ロフト付）の片流れ屋根で包まれた簡素でコンパクトな箱とした。内容はリビング、ダイニング、和室が一体となり、広く見えるように、ワンルーム的な空間とした。

ダイニングのベンチから引き戸により開放されたリビングとテラスが連続し、その先に見える風景を取り込み、室内にいながら戸外にいるような、気持ちの良い非日常的な空間を求めた。キッチンは扉で隠して日常生活を感じさせないようにした。限られた予算の中で、素材を限定し、外壁を風景に溶け込むようにチャコールグレーのガルバリウム鋼板小波貼りとし、メンテナンスフリーにした。内部は床、壁、天井を杉板張りにし、経年変化を楽しめるようにし、時間の経過と共に、この山荘が風景の一部となることであろう。

所在地：鳥取県西伯郡

構造：木造平屋建

用途地域：都市計画区域外（無指定）

敷地面積：705.00m²

建築面積：67.71m²

延床面積：84.47m²

写真：福澤昭嘉