大西憲司設計工房[大阪/設計事務所]Kenji Ohnishi archtect

須磨の家

Suma
2007

敷地は神戸南部の丘陵地帯、1990年代に宅地開発された典型的なニュータウンの一角にある。周辺はメーカーやデベロッパーによる住宅が建ち並び、緑が少なく、決して良好な環境とは言い難い。そんななか、この家は、70代のシニア夫婦である建主が、これからの人生を娘夫婦や孫たちとともにのんびりと楽しく過ごすためのものとして計画された。

敷地は擁壁ではなく、法面がひな段状に造成されていた。周辺の擁壁で平らにされた上に建っている家々の様が、このとりとめのない風景に一役かっているように思えたため、この既存の法面を残し掘削を最小限にとどめることにした。残った法面に、管理が楽なように割石を敷き並べ、平地の部分に建物のボリュームを設定、隣地北側の空地にいずれ住宅が建つことを想定して、建物は南側に寄せ、北側に板塀で囲った庭を設けた。また周囲の環境やそのような敷地条件を考え、1階に寝室、納戸、水回りを、2階にリビング、ダイニング、キッチンを配することとした。構造は、将来娘夫婦へ家を譲った際に2階ルーフテラス部分に増築できるよう、1階をRC壁式構造とし、2階を木造の混構造とした。

豆砂利洗い出しの土間から入る1階玄関は、正面コンクリート壁の上下に設けられた嵌め殺しの窓、外部に植えられたオカメッタと竹が空間に奥行を感じさせるとともに、1-2階をつなぐ鉄骨階段を軽やかに見せている。浴室は夫婦がのんびりと入浴を楽しめるよう、仕切りにはトウメイガラスを用い、開放的で明るく露天風呂のようなものにした。寝室は、北側のやわらかい光や風、植えられた緑など、自然を感じながらゆっくりと休めるように北庭に面して配した。

これからの暮らしの中心となる2階に設けられたリビング、ダイニング、キッチンは一室空間とし、南側隣家からのプライバシーや眺めを考慮し、西側にバルコニーを設けた。木製の引戸を開け放つと、内外が一体となり、室内に風景を取り込むことができる。西日対策として、バルコニーに1間の深い庇を設けている。ルーフテラス、趣味の家庭菜園は、1日中陽のあたるキッチン横の南側に配した。このとりとめのない風景のなか、この住宅が少しでもよりよい契機になればと考えている。

所在地:神戸市須磨区

構造:RC+木造2階建

用途地域:第一種低層住居専用地域

敷地面積:191.57m²

建築面積:62.36m²

延床面積:106.29m²

写真:福澤昭嘉

作 品

PIECES

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